実際に読んだ名著5選!NHK Eテレ「100分de名著」読まずにはいられない名著をご紹介

NHK Eテレの「100分de名著」は、1回25分 x 4回、つまり100分で名著を読み解く番組。まるでテレビで見る「読書会」。

番組の面白さにすっかりハマって、NHK オンデマンドでアーカイブスを視聴しています。

番組を見たあと「この本読みたい!」となったら図書館で借りたり、アマゾンで買ったりして、実際に読んでいます。

どんな名著を自腹で手に入れて、時間をかけて読んでいるのか?

読まずにはいられなかった名著を5冊、ご紹介します!

1.「苦海浄土」石牟礼道子

  • 2016年9月放送
  • 講師:若松英輔(批評家)
  • 朗読:夏川結衣

本の存在は知っていたものの、「苦海浄土」という詩的なタイトルと、公害病である水俣病が結びつかず、小説なのかノンフィクションなのか、よく分からずに、これまで読まずに来てしまった。

水俣病とは一体なんだったのか、ぐりぐりと胸に迫る全4回の放送でした。

図書館から取り寄せた「苦海浄土」は分厚く、2段組で771ページ。何度も延長して、3ヶ月近くかけて読みました。

ジャンル分けすることができない「苦海浄土」独自の表現が生み出されたのは、水俣病という得たいの知れないバケモノをどうやって同世代人に経験させることができるのか、考えに考え抜いた果ての「事実を表現した創作」だからなのか。

読まずにはいられない、名著の中の一冊だと思います。

2.「夜と霧」フランクル

  • 2012年8月放送
  • 講師:諸富祥彦(明治大学教授)
  • 朗読:田中一成、平野正人

心理学者であるフランクルが、1942年ナチス・ドイツの強制収容所に収容され、1945年開放されるまでの体験記です。

番組では、東日本大震災も念頭に、絶望の中で人はどうしたら人間性を失わずに生きることができるのか、壮絶な収容所体験とともに、フランクルが到達した信念が語られます。

購入した「夜と霧・新版」(みすず書房)は、ハードカバーで169ページ。新訳が読みやすく、数日で読了しました。

「ひとりの人間が避けられない運命と、それが引き起こすあらゆる苦しみを感受する流儀には、きわめて厳しい状況でも、また人生最期の瞬間においても、生を意味深いものにする可能性が豊かに開かれている」(夜と霧・新版 P114)

フランクルが収容所の病院で出会った若い女性はチフスにかかり、自分が数日のうちに亡くなることを知っていました。しかし実に晴れやかに、「運命に感謝しています。だって、私をこんなひどい目にあわせてくれたんですもの」「以前なに不自由なく暮らしていたとき、私はすっかり甘やかされて、精神がどうこうなんてまじめに考えたことがありませんでした」と、話したと言います。

本の最後では、収容所から開放された人たちの不満と失意、不幸も語られます。夜が明けても、深い霧が立ち込める現実。それも割愛されることなく、語られるのです。

3.「人生の意味の心理学」アドラー

  • 2016年2月放送
  • 講師:岸見一郎(哲学者・カウンセラー)
  • 出演:三浦透子・岩松了

フロイト、ユングと並ぶ心理学の巨匠、アドラーの代表作。過去ではなく、未来の目的から思考することで、「人はいつでも自分の人生を幸せなものへと変えることができる」というポジティブな人間観に貫かれた人生の指南書とも言える一冊。

番組では、アドラー研究の第一人者、岸見一郎さんの解説とともに、町の診療所を訪れる人々と安土羅先生との対話によってアドラー心理学のポイントが明かされます。

人はそんなに簡単に変われないと主張する女子高生に、安土羅先生は「それは、君が変わりたくないと思っているからだ」「人生が困難なのではない。あなたが人生を困難にしているんだ」と畳みかけます。

劣等感のかたまりだと言う若い男性が診療所を訪れると「劣等感はあくまでも他者との比較の中で生まれた主観、君自身の思い込みだ」と一蹴。「もっと、普通であることの勇気を持つんだ」と力強く背中を押します。

娘の美大受験に反対する母親がやってくると、「まったくもって課題の分離ができてませんね」「娘さんの課題に土足で踏み込まず、信じて見守ってください。さもなくば、彼女が人生の選択に失敗したと思った時、お母さんのせいにするでしょう。恨んだり、復讐しようとするかもしれない。自分の人生の責任は、自分でとるしかないんです!」と一喝。

アドラーにとって、人生の意味とは? 

人類の全体に関心を持ち、共同体に貢献して、他者とより良い関係を築き、自分の人生を生きること。そのための知恵、テクニック、実践が、専門用語を排したわかりやすい言葉で書かれています。

いつもそばに置いておきたい名著。新版はソフトカバーで297ページ。もちろんウチにもあります。

4.「群衆心理」ル・ボン

  • 2021年9月放送
  • 講師:武田砂鉄(ライター)
  • 朗読:長塚圭史

フランス革命を題材に「主体性」を喪失した個人の集団「群衆」の台頭に着目し、「群集心理」の発生メカニズムに迫った社会心理学の名著。ヒトラーが読み込んだという、危険な書物でもあります。

番組で紹介されたマリー・アントワネットの息子、ルイ17世のエピソードが衝撃的でした。

ワタクシ昭和世代にとってフランス革命といえば「ベルサイユのバラ」。ベルバラでは、マリー・アントワネットが投獄されたあと、幼いルイ17世は市民に引き取られ、次第に母親を忘れていく、というシーンで終了。

しかし実際は監禁され、教育係とされた群衆の数人から凄惨な虐待を受け、光も射さずトイレもない劣悪な環境で獄死したという事実。そこにはフランス革命を支えた啓蒙思想のカケラもなく、単純な復讐心で動いてしまう恐ろしい群衆の姿が浮かび上がります。

政治やメディアのあり方、SNSでの発信など現代にも通じる恐ろしさ。群衆の盲目化を拒否し、徳性を高める手段はないのか。番組では、多様な教育、経験、自ら考える思考力などに注目します。

図書館から取り寄せた「群集心理」はコンパクトな文庫本で302ページ。古典的な表現が多いけど、それを味わいつつ、1ヶ月ぐらいかけて読みました。

5.「アイヌ神謡集」知里幸恵

  • 2022年9月放送
  • 講師:中川裕(言語学者)
  • 朗読:木原仁美(知里幸恵の姪の娘)
  • 語り:宇梶剛士

アイヌの人々が語り、口伝えてきた神謡「カムイユカラ」を17歳の知里幸恵が書き留めたノートが基になり、1923年に出版された本。キツネやフクロウ、ウサギ、貝などが「自ら歌った謡」が13篇、幸恵の翻訳(アイヌ語から日本語)で紹介されています。

自然と人間が共存し、お互い尊重し支え合って豊かだった、かつてのアイヌの世界。それらを生き生きと伝えた知里幸恵。しかし、出版用原稿の校正を終えた当日夜、心臓麻痺により19歳で死亡しています。若すぎる。。

本が出版された時代は明治政府の北海道開拓から30年以上が経ち、アイヌは土地だけでなく、伝統文化や、生きていくのに欠かせない生業まで取り上げられ、民族の存続すら危機に直面していたと言います。

シマフクロウが自ら歌った謡のあらすじは、こんな風。人間中心の視点ではなく、自然がどのように人間を見ているのか、アイヌの世界観が伝わってきます。

お金持ちの子供の放った矢は素早く身をかわしたが、貧乏な子が不憫で、彼の放った矢を私(シマフクロウ)は自ら受け留めた。
矢に当たって舞い降りた(死んだ)私を、貧乏な子は大切に家に迎え入れた。
私は「銀の滴(しずく)降る降るまはりに」「金の滴降る降るまはりに」と歌いながらその家を宝で満たし、家を立派に造り替え、家族に夢を見せて、自分からの恵みであることを伝えた。
感動した一家は何度も礼拝し、感謝して、私も神々から賞賛を受け、その後も人間たちを見守っている。

アイヌ神謡集は、岩波書店から2023年に補訂新版が発行されました。文庫本で212ページ。

アイヌ語と日本語が対をなす構成で、文字を持たなかったアイヌ語の音の響きが、ローマ字の発音から微かに伝わってきます。

まとめ

いや〜、名著って自分の知らなかった世界、思っても見なかった考え方、まったく違った視点をこれでもか、というぐらい見せてくれますね。

世の中にはたくさん、実用本や役にたつ本があふれていて、あれも読まなきゃ、これも、となっている一方で、昔名前を聞いただけの名著を手に取るキッカケは、近頃ほとんどありませんでした。

NHK Eテレの「100分de名著」は、名著との出会いや再会のキッカケをくれる番組。

やっぱり本っていいですね。

おすすめです!

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