蜷川実花 個展 「東京 TOKYO」に行ってきました!いい写真ってどんな写真?

咲き誇る黄色いユリの群生

写真学校の先生のオススメで、蜷川実花さんの個展を初めて見に行ってきました。渋谷パルコで2020年 6月12-29日 開催されていた「東京 TOKYO / MIKA NINAGAWA」です。私が興味を持ったのは、展示された500枚以上の写真のほとんどが、「写ルンです」で撮影されたということ。RAW現像はおろか、露出や色温度も調整できない使い切りのカメラです。

個展では、人や街、家族の笑顔など、たくさんの写真がランダムに組み合わされ、タテや横に並んでいたり、コの字型に並んでいたり、組み合わせの枚数もさまざま。一見したところ意味があるように思えない展示方法。

「なんでこうやって並べたと思う?」と実花さんに謎をかけられているようで、ひとつひとつ考えてしまうんですね。もちろん正解はありません。

「ああ、これはきっとある一日を時系列に並べたのかな」とか、「これは全部人が写っていて、ピースしているな」とか、「非現実(撮影現場や夜の街、ショーパブ)と現実(家庭や子供、スーパーの棚)を対比させたのかな」とか、自分の中で正解を見つけていく。それが楽しくて、飽きない。

「写ルンです」ってフィルムカメラなんですね。非現実も現実も、優しく包まれているような表現は、フィルムだからなのか。

思えば、写真学校で最初に習ったのは、「自分が撮りたいものが撮れた写真がいい写真」。

いい写真を撮る前に、「自分が撮りたいものはなにか」「それを撮って何を伝えたいのか」ちゃんと考えましょう、ということでしょうか。

そう言われると、自分の写真のどれもが「どうだ、スゴイだろう」と一方的に主張しているようで恥ずかしくなって、なにを撮ったらいいのかわからなくなったことがありました。

蜷川実花さんの個展は、見る人に考える余白を残している。彼女が伝えたいことは明確にあるんだろうけれど、一枚一枚、結論は見る人にゆだねている。

そして、カメラ。最新の高価なカメラがあれば、いい写真が撮れるわけではない。「写ルンです」でもいい写真は撮れるということ。

そこで、もうひとつ思い出したことがありました。

1970年代、60歳を超えて写真を撮り始めたアマチュア写真家の増山たづ子さん。ダム建設で水没することが決まった故郷の暮らしをつぶさに撮影した増山さんの写真集「故郷 ・わたしの徳山村写真日記」を図書館で借りたんです。

増山さんが写真を撮るようになったきっかけは、太平洋戦争で行方不明になった夫が「もし帰ってきた時、村がなくなっていたら説明のしようがない」と考えたことから。彼女が使ったカメラは「ピッカリコニカ」。誰でも撮影できるオートのカメラです。

村人の笑顔や、村の楽しい時間を優しく切り取った彼女の写真も、見る人に自分自身の思い出と対話する時間を与えてくれます。彼女が伝えたかったことは、しっかりとありながらも。

蜷川実花さんの個展と増山たづ子さんの写真集は、笑顔が多いのも共通点。二人とも被写体に愛されているんだなあ、というのが伝わります。撮影者として、かなりうらやましい。

いい写真ってどんな写真?

たくさんの答えがありますよね。

撮影者の伝えたかったことを見る人が想像しているうち、その人自身の記憶や思いに写真が重なっていく。それはきっと、間違いなくいい写真なんだと思います。

写真は奥が深い!

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