インターネット時代に、本を買う意味ってなんだろう?

買わない生活・稲垣えみ子著

稲垣えみ子さんの新刊「買わない生活」(東洋経済新報社) (2026年7月29日発売)を購入して、再び楽しく読みました。

再び、と言うのは、この本の元になったインターネットの記事を数年前に全て読んでいたから。記事は今でも東洋経済オンラインに同タイトル「買わない生活」で公開中。誰でも無料で読むことができます。

今もネットで読めるんだし、既に一度読んでるんだから、本は買わなくてもいいかな、、

な〜んて一瞬思いましたが、本として読んでみると、ネットの時とは伝わり方が全然違って驚いちゃった。

それに、ネットは公開元の都合で突然ページが閉鎖される可能性もないとは言えないし。

大事なコンテンツは手元に置いて、何度でも読み返したいな〜。

坂や丘のある町 walk along

記事執筆 & 写真撮影 青山田あかり

神奈川県 横浜市在住。写真ブログ「坂や丘のある町 walk along」に、気楽な記事を毎週投稿しています。

稲垣えみ子さんの「買わない生活」

稲垣えみ子さんは、記者として約30年勤務した新聞社を50歳で退社。冷蔵庫なし、エアコンなしの超節電生活 (電気代約200円/月) を楽しく暮らしておられる。

そんな稲垣さんが新刊「買わない生活」(東洋経済新報社) で共有してくれたのが、「買わない」、つまり「お金を使わない」ことで幸せも安心もすべてが手に入る、という究極のマインドシフト。そして、「買わない生活」を実践するための数々のノウハウ。それがとってもユニークで、読みながら思わず笑っちゃう。

安定した収入を自ら手放した稲垣さんが、奮闘努力の末、お金という“魔物”を制し、自由に面白くゼータクに人生を回していけるようになるまでの冒険記です。

ちなみに「お金を使わない」を極めた稲垣さんは、新たな試みとしてこの本の印税を受け取らず、読者への「寄付」とすることで、本の値段を2000円を切る価格(1980円)におさえたんだそう。

銭湯で思いもよらぬ事件が

会社を辞めて、知り合いがひとりもいない町の極狭マンションに引っ越した稲垣さんは「家の定義を変えよう」と考えます。

皆さまもかつての私も、普通の現代人は、玄関のドアを開けた先の小さな空間を「家」だと思っている。(中略)でもこの、我らが疑いなく「常識」と思い込んでいる家の定義は、ちょっと観点を変えてみれば案外非常識なのかもしれないんだとしたら?(中略)例えば野良猫は町全体をウロウロして、あっちこっちで餌をあさったり気ままに居眠りしたりしている。町全体がわが家である。(中略) 我らも家というものについて、もっと柔軟に考えたっていいんじゃないだろうか。うん。町全体がわが家。

「買わない生活」 稲垣えみ子著・東洋経済新報社 (p100 – 101)

ガスを契約していない稲垣さんは、近所の銭湯を「わが大浴場」と認定し通い出すのだけれど、湯船につかって顔をくるりと撫ぜただけで、いきなり常連さんから「お風呂の中で顔を洗わないで!汚いじゃない!」と怒られてしまう。

たぶん問題は、私が「湯船で顔を洗った」という行為そのものにあったわけじゃない。(中略) ちゃんとお金払ってるし何か文句ありますかとでもいうような態度でズカズカやってきた見慣れぬ女に、彼女は、皆が時間をかけてコツコツ積み上げてきた大切な世界をブチ壊されかねない危機感を抱いたのではなかろうか。(中略)胸に手を当てて考えてみれば、私は今後「マイ風呂」となる初めての場所に乗り込んでいくにあたり、なめられちゃいけないと(中略)必要以上に頭を高くしていた気がする。

「買わない生活」 稲垣えみ子著・東洋経済新報社 (p113)

ここのくだりは、ネットで読んだ時よりも、本で読んだ時の方がず〜ん、と胸に響きましたね〜。

ワタクシも34年間勤めた会社を辞め、非正規で今の職場に再就職して3日目に、職場のベテラン非正規社員さんから「いちいち聞かないで!忙しいんだから!」と怒られました。

同じ非正規社員なんだし、親しくいろいろ聞いてもいいだろう。正規社員よりはヒマだろう。などと、勝手に思い込んだワタクシは、彼女に対するリスペクトが圧倒的に足りてなかった。

稲垣さんは、くだんの銭湯が行きにくくなり、別の銭湯に行ったりもするけれど、そこでもやっぱり同じ常連さんと出くわし、ついに観念して作戦を大幅に変更。

勇気を出して常連さんに「こんにちわ!」とご挨拶。すると向こうからも「ああ、、、こんにちわ」と返事が返ってきました。

そこから少しづつ信頼関係を築き、今では常連さんたちとおしゃべりしたり、夕飯のおかずをもらうまでの仲に。

「ネットで読む」と「本で読む」の違い

ネットで記事を読む時、ワタクシは限られた時間の中で、情報を探していることが多いです。

稲垣さんの銭湯の記事も、当時ネットでザッと読み「やっぱり挨拶って大事なんだな」という「お役立ち情報」として理解しました。加えて、ネットの記事は一度読んだら、その後読み返すことがほとんどない。

今回、本というカタチで同じ内容の文章を読んだ時、自分の経験を思い出して、じっくり味わって読むことができました。

稲垣さんはその後、ご近所さん同士モノをもらったりあげたりという、お金を介さない豊かな関係性に突き進んでいくのですが、それもネットで読んだ時は「やっぱりお世話になっている人には、おみやげとか渡した方がいいんだな」という程度の理解でした。

そこで実際ワタクシ、いつもおまけしてくれる近所の惣菜店のおばさんに、くだものをお渡ししてみたんですよね。しかし、残念ながら喜んでもらえなかった。。

おばさんは、「お助けするってことね?たくさんもらって食べきれないのね?」とワタクシのプレゼントの目的を図りかねて、困惑していました。

改めて本を読み返してみると、大事なことが書いてありました。

人様にものを差し上げる時は、「もらっていただく」という気持ちを絶対に忘れてはならないのであります。その気持ちさえあれば、あげたことが迷惑にならぬよう、相手をよく見て、相手が本当に必要としているものを想像するし、「押し付けちゃってすみません!」とか「もらっていただいてホント助かります!」などの一言を添えるといった行動も自然に出てこよう。

「買わない生活」 稲垣えみ子著・東洋経済新報社 (p267)

いや〜、あの時、そこまでの気持ちは持ててなかったなあ。

こうした振り返りは、同じ文章でも、ネットより本で読んだ方が、深く深〜く、理解できますね。

「買わない生活」をお守りに

「いちいち聞かないで!忙しいんだから!」と、ベテランさんから怒られたワタクシは、ビックリして、落ち込んで、しばらく近寄らないようにしてました。

しかし様子を見ていると、彼女は結構世話好きで責任感も強く、長年の経験から「これはこうした方がいい」という信念を持って仕事をしている人のよう。

そこでワタクシも、勇気を出して彼女にアプローチ。

これぞという案件に関しては「このように進めてもいいですか?」と事前に彼女の意見を聞いてみるように。

すると、「それは私が引き取ります」と言って面倒な調整をやってくれたり、時には黙って積み残しの仕事を片付けてくれたり。先日は、旅のおみやげを渡したところ、「楽しかった?」と聞いてくれて、笑顔の会話ができました。

稲垣さんの「買わない生活」は、「こうすれば誰でも幸せになれる」ということではないし、彼女の考えや生活を丸ごと取り入れることが目的でもない。

お金に依存せず、「どうやって食べていくのか」「どうやって生活していくのか」「どうしたら幸せになれるのか」。

難解なこの問題に真正面から向き合った稲垣さんのユニークな冒険の数々から、幸せに生きるためのたくさんの選択肢が見えてきました。

それは「お金」の問題だけにとどまらず、日々の不安や不満、人間関係にも効果がある、ワタクシの人生の「お守り」のような存在になりそうです。

いつでも本棚から取り出して、何度でも読み返したい!

関連記事