ここらでちょっと、マーケティングを勉強だ
1991年に新卒でメーカーに入社して、配属されたのは海外営業部。実際は、海外の販売会社に輸出する製品の物流業務や価格管理、在庫管理などが主な業務でした。
以来30年近く、会社で営業支援や販売促進に携わってきましたが、自分の所属部署が “マーケティング部”という名前になったのは2000年代に入ってから。
インターネットが普及して、メールが一般的になり、パワーポイントなんか使い始めたころですね。
でも、海外営業部が「インターナショナル・マーケティング部」へと、名前がカタカナに変わっただけで、やってることはそれほど変わりませんでした。ノートがエクセルやパワポにはなったけど、自分でデータをまとめたり、業者さんと一緒に販促物を作ったりという基本は変わらず。
ビジネス英語は多少勉強しても、マーケティングなんて一度も勉強したことなかったです。
今、職場ではデジタルマーケティング一色
ここ数年、職場ではどんどんデジタルマーケティングの考え方が入り込んできて、データをもとに分析した結果の提案や、実践が厳しく求められるようになってしまいました。
多種多様なデータの意味や仕組みを理解して、正しく分析しないと。でもその前に、ソフトの使い方を覚えないとデータも取れない。
HTML/CSS、SEO、ウェブライティング、ウェブアクセシビリティ、アナリティクス。。。
覚えるだけで精一杯。
本当にスゴイ世の中になっちゃったなあ
そんな時、図書館で手に取ったこの本。
「デジタルマーケティングの教科書 5つの進化とフレームワーク:牧田幸宏著(東洋経済新報社)」
私のように、「いつの間にかマーケティング担当になっていた」「最近急に職場でデジタルマーケティングをやることになった」人間には、とても役に立つと思います。
デジタルマーケティングの混沌とした状況は、「まさに暗闇の中の男たち、象を評すの状態」。この本は、「デジタルマーケティングとは何か?」という問いに明快な定義を与え、読者にその全体像を見せるため、未来から過去へ、そして現在へ縦横無尽の知識の旅を体験させてくれます。とは言え「教科書」ですから、マーケティングの理論や分析手法、実例などはふんだんに紹介して解説。
面白いのは、「デジタルマーケティングと従来型マーケティングは対立するものではなく、包含して上書きし、進化させる関係」「基礎や土台は従来型マーケティングにある」として、初心者はまず、従来型マーケティングの説明を最低5回熟読するように、と指定してくるところ。
私、第2章「従来型マーケティングの戦略策定プロセス」、本当に5回読みました。確かに、最初読んだ時と5回目では理解度が違う。かなり圧が強いですが、実は読者にすごく親切な本です。
この本の終盤には、付録として「デジタルマーケティングの勉強法」が掲載されています。デジタルマーケティング初心者が、このあとどんなステップでどんな本を読んで勉強すればいいのか、具体的に教えてくれる。やっぱり親切。
デジタルマーケティングは、企業がお客様にとって馴染みのお店になること
でも、一番面白かったのは、最後の「おわりに」。
ここまで、カタカナや英語、数字まじりの難しい話をしてきて、最後の最後に、「デジタルマーケティングは(なじみの歯医者やラーメン屋のように)企業がデータによってその顧客を知り、顧客の馴染みの店になるような関係を構築できるようにすること」なんだと。旅の終わりが「馴染みのお店」だったとは、謎が解けたようでした。
その言葉通り、著者は読者に、雑談を織り交ぜながら心やすく語りかけてきます。最後まで読んでくれた読者は、俺の店の常連さんだよ、という感じで。
この本は、紙を印刷した二次元のアナログな本だけど、その伝え方は、「デジタルマーケティング」。読者を理解し、読者の役に立ち、読者のお馴染みになろうとしている。いや、昔から世界中の商人が行ってきた「顧客理解」と根っこは同じなんですね。
私が勉強してもしなくても、会社は困らないです。若くてスキルのある人を代わりに持ってくればいいんですから。
でも、今の時代をマーケティングの本から読み解くのも面白そう。変化と普遍を知るために。